住民交流の場「コーロ・グランデ」 元小学校長の稲葉泰樹さんが建設
沼津朝日新聞 1999(平成11年)3月24日水曜日掲載
画廊や展示室など複合的に
地域の教育力向上にも活用
元小学校長で、画家の稲葉泰樹さん(61)は、自宅近くの下石田977-2に、複合文化施設「コーロ・グランデ」を建設した。「地域の文化振興と情報交流の場になれば」との願いを込めて、情熱を注ぐ稲葉さん。来月上旬の全館オープンに向けて準備に追われており、現在、オープン企画として、自らも所属する「グループ風土」の小品展を27日まで、二階画廊で開いている。
スペイン語で「大合唱」の意を表す「コーロ・グランデ」。「単なる貸店舗の寄せ集めにはしたくない」と私設全体でハーモニーを紡ぎ合うような一体感、相乗効果を求め、趣旨に賛同の得られて喫茶室と英会話教室、美容室が出店。稲葉さん自らが画廊・展示室・創作教室を運営する。
具体的には、私設全体で季節に応じたテーマを設けて、室内の装飾や模様替えをしたり、利用者間の話し合いで施設運営を検討していくことを計画。人の和、出会い、コミュニケーションを創出し、「広い視野で、地域文化振興と発展、情報交換の場になるよう、努力を続けていきたい」としている。
施設は、木造2階建て、延べ床面積約400平方メートルで、約30台を収容する駐車場を備えている。ヨーロッパの山荘風の外観が、住宅街にあって異彩を放つ。建物内入り口付近のオープンスペース、一部半透明で採光する、屋根まで突き抜けた階段の吹き抜けが、明るさと開放感を演出している。
稲葉さんが同施設の建設を考え始めたのは、昨年3月に原小学校を退職する十年前から。「若い教諭が毎年入ってくるが、お手本がないと何もできない人が多く、個性がない。若い教諭たちと同じように育っていく子供達を見ている中で、地域社会における教育の必然性を感じた」という。
義父の故忠雄さんが生前、大岡地区連合自治会長などを務め、現在活性化している同地区コミュニティーの基盤を整備、地域の教育力向上に尽力する中、志半ばで急逝したことも、きっかけの一端にある。
「義父の意志を継ごうと思い、自分にできる事を考えた。中学校の美術教諭として長年勤めてきた知識と経験をもとに、一人でも多くの人たちに創る喜びを伝え、地域社会に文化面で貢献していきたいと思った。」とはなす。
こうした思いを大きく反映して設けたのが、展示室。プロ・アマ問わず、作品発表の場として低料金でスペースを貸し出し、作品を通しての仲間作りや、趣味の話題を提供してもらおうというもので、同施設のメインスペースと位置づけている。
「趣味で取り組んでいる作品を発表し、人に見てもらうことで、作品制作の励みにもなると思う。作品は、美術作品に限らず、どんな物でも展示していきたい。画廊は、ある程度の実力のある作家に使ってもらい、展示室を利用する人達に、参考にしてもらいたい。」としている。
また、創作室では、稲葉さんが絵画・陶芸、妻の和子さん(60)が服飾リフォームや編み物などの教室を開くことを予定。今後の状況によっては、外部から講師を招いた教室の開催も検討している。
稲葉さんは、「展示室の精神を一人でも多くの人に理解してもらいたい。地域住民が集い、笑い声が聞こえてくるようになれば、最高にうれしい。」と話し、積極的な利用を呼びかけている。
なお、27日まで画廊で開かれている風土展には、会員15人が描いた油彩画や版画、コラージュなど、抽象画を中心とした25点が展示されており、同施設のオープンに華を添えている。開場時間は午前10:00から午後8:00。同施設に関する問い合わせは「コーロ・グランデ」(29-0569)。
以上 記事全文
注1)駐車場について:現在駐車場は9台です。
注2)申し訳ございませんが2020年現在、当館に御用の方以外は御入館いただけません。