教員時代のノウハウ生かし 文化・情操面でお手伝い

東京新聞 1999(平成11)年3月29日 "この人と"欄に掲載

昨年3月限りで教員生活にピリオドを打った沼津市大岡の画家稲葉泰樹さん(61)がこのほど、長年の夢だった地域の交流施設を完成させた。自宅近くに設けた施設は「コーロ・グランデ」と名付けられた。画廊や喫茶室、展示室を備えた施設にはどんな思いが込められているのか。稲葉さんに聞いた。(聞き手 鎮西 努)


地域文化交流施設を完成させた画家 稲葉泰樹さん(61)
1937年9月 東京都出身。
静大美術家卒業後、沼津市内の中学校教師に。昨年3月原小学校を最後に定年退職。


—どんな思いで開設を思い立ったのですか?—

もともと、物を作る場、飾る場、レベルの高い作品を見る場を一つにまとめた施設がこの地域にないのを寂しく感じていた。個性、感性の必要性がいわれているのに、それを磨いたり、発揮する場がない。むなしさを感じていた。子供も大人ももともと持っているはずの、ものを作り、飾り、見られる喜びや潤いを満たす場があればと言う意識は10年以上前からあった。

—その思いを具体化させたわけですね。—-

義父も教育者で、大岡コミュニティーの組織作りを進め、学校に任せっぱなしじゃなく、地域での教育に力を入れた人だった。その影響もあるが、自分の退職に当たり、何か形にしようと思った。子供が荒れているといわれるが、地域で親同士もつながりがないところが多い。絵や陶芸ですべてが良くなるわけじゃないが、教員時代のノウハウを生かし、文化・情操面でお手伝いしましょう、ということです。


コーロ・グランデは木造2階建て、延べ床面積約400平方メートル。欧風山荘の外観。展示室、画廊、創作教室に加え趣旨に賛同した喫茶店、美容院、英会話教室が入る。


—どんな施設にしたいですか—

絵・写真・書・刺繍・陶芸など、どんなジャンルでもいいと思う。年齢も問わない。「もう年だから」とか「私は下手だから」じゃなくて、物を作りたい、見てもらいたい、と言う意欲のほうがよっぽど大事。ここで作品を作り、展示室で人目にさらすのは、緊張感があるが、そうすることで仲間ができるし、刺激もでて、次は多少でも良い物を作りたいと思うでしょ。そういうコミュニケーションの場所になれば。

—自身はどんなかかわり方を?—

もちろん自分の絵も飾ります。絵については長いこと教員をやってきて、ある程度リーダー的な立場に立ってもいいのではと思っているので、創作室で絵と陶芸を教え、作る楽しさを伝えていきたい。すでに3歳と4歳の子も受け付けたし、70歳くらいのおばあさんも陶芸をやりたいと言ってきている。4月から開講します。


施設名はスペイン語で「大合唱」。
合唱で各パートが響きあうように、施設内の各室が絡み合い、地域が美しいハーモニーを奏でられれば、との思いを込めたという。
展示室利用や創作教室のお問い合わせはコーロ・グランデ電話0559-(29)-0569へ

以上 記事全文

東京新聞記事

Posted by corocoro